大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和29(あ)2559 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人池田和夫の上告趣意について。

論旨は、原判決の憲法一三条違反を主張するけれども、実質は、囮捜査によつて

誘発された麻薬の所持を有罪としたことを非難するに帰する。しかし「他人の誘惑

により犯意を生じ又はこれを強化された者が犯罪を実行した場合に、わが刑事法上

その誘惑者が場合によつては教唆犯又は従犯として責を負うことのあるのは格別、

その他人である誘惑者が一私人でなく捜査機関であるとの一事を以てその犯罪実行

者の犯罪構成要件該当性又は責任性若しくは違法性を阻却し又は公訴提起の手続規

定に違反し若しくは公訴権を消滅せしめるものとすることはできない」こと、当裁

判所の判例(昭和二七年(れ)五四七〇号同二八年三月五日第一小法廷決定)の趣

旨とするところである。そうだとすれば本件第一審判決中判示第一の(二)の犯行

(これは被告人の麻薬取締法違反の犯行中の一部分である)をなすに至つた動因が

麻薬取締官Aの從慂行為によるものであつたとしも、そのことは被告人の刑責にか

かわりなき道理であり、これと同趣旨に出た原判決は正当てある。論旨は採用でき

ない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお

り決定する。

昭和三六年八月一日

最高裁判所第三小法裁廷

裁判長裁判官 河 村 又 介

裁判官 島 保

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裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

裁判官 石 坂 修 一

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